TOMYAM JOURNAL

世界の片隅でしたためる個人備忘録

[書籍]マリア・シャラポワ自伝

マリア・シャラポワ自伝

ロシアの女子テニス選手、マリア・シャラポワの自伝。4大会全てを含むグランドスラムで5勝の記録を持つテニス界の人気選手。様々な広告のモデルにも起用されているのでテニスに興味がない人でも名前を聞けば顔が浮かぶだろう。

そんな超有名選手がまだキャリアの成熟期である2016年に禁止薬物指定違反で約15ヶ月の資格停止を受ける。

現在は停止期間が終了し、ランキングを大きく落としながらもツアーに復帰している。

その活動停止をしている期間を利用して書いたのが本書だろう。内容はシャラポワの今までの人生のほぼ全てを語っている。

タイトル名は「UNSTOPPABLE」。幼少期にテニスをはじめその才能を見出され、娘の才能に掛けた父親と二人きりで、アメリカのテニススクールに入るために渡米する。当時シャラポワは6歳、父親の所持金はわずか700ドルだった。その後11歳でナイキと契約し、14歳でプロデビュー、そして17歳でウィンブルドン優勝と華々しい結果と美貌で有名になるが、シャラポワにとっては幼少期からテニスをすることが生きる手段であり、貧しさから抜け出すには勝つしかなかった。今ではセレブスポーツ選手のように知られているがその根幹にあるのは常に戦い続ける人生だったのだ。

 

本書で面白かったのは全てが詳細に書かれていることで、所持金700ドルでアメリカの地に降り立った親子が実際にどのように行動したのか。正直そこが知りたかった。シャラポワの父、ユーリはフロリダにあるまっすぐにアカデミーに趣き、コーチたちの前で娘にテニスを披露させる。そしてシャラポワのポテンシャルに驚くコーチやアカデミーのオーナーにスカラシップとして滞在させてくれと売り込むのだ。それが実現するくらいシャラポワの才能は際立ったものだったということだ。

シャラポワのテニス人生には父ユーリ氏の存在が極めて大きかった。研究熱心であった父親は娘のキャリアの成功のために何ができるかを調べ、ウィリアムズ姉妹をモデルとした。成功する選手には必ず幼い頃に誰かみじかな人物が導いてくれている。ウィリアムズ姉妹にもアンドレ・アガシにもそういうの親がいた。自分にとって父親がそういう存在だったとシャラポワ本人も語っている。

そしてそんな父親は少なからず周りの人たちとトラブルを起こした。そのせいで一旦入ったアカデミーを追い出される羽目になる。その後他の親子は他のアカデミーに同じようにスカラシップとして入れるように交渉しに行くが、そこに待ち受けていたのは貧しい親子の足元を見た悪質な経営者の登場だったりと波乱万丈な人生が続いて行く。世の中は厳しいものだ。その後シャラポワが11歳の頃ナイキと契約し、まとまったお金が入り、生活の心配がなくなったという場面では少しほろっとした。

とここまででまだ本書の半分以下、その後プロとしてデビューして、グランドスラムで勝って、恋人ができて、、、などなど幼少期のシンデレラストーリーほどの刺激はなかったが全てにおいて赤裸々に語っている。それらは毒々しいものでもある。