TOMYAM JOURNAL

世界の片隅でしたためる個人備忘録

ジャーナリズム講座に参加して来ました。 講師:小泉悠 氏

静岡県立大学が主催している、ジャーナリズム公開講座に参加して来ました。

 

小泉悠氏を講師に迎え、「復活したロシアの軍事力と日本」をテーマに聴講しました。

 

ロシアという国に対して持っているイメージは何と無く不気味な国という印象でした。そもそもよくニュースで耳にする割には知っていることが少ない国でもあります。日本国内ではロシアに関する十分な内容の報道が少ないということもあると思います。

 

以前、「オリバー・ストーンオンプーチン」を読んで、西側の視点で見るロシアと、プーチンの視点からみるロシアの間のギャップが新鮮でした。西側が伝えるロシアのイメージと違い、特にプーチンは冷静で、合理的にロシアという国を運営している印象でした。

 

今回の講座では、先述した本で得たロシアの印象と、日本のロシア専門家の解説するロシアとはどれくらい重なるものがあるのか、一種の答え合わせをするつもりで聴いてみようと思って見たわけです。

 

それまで持っていたロシアのイメージと実際のロシア

・ロシアは大国

 →国土の大きさが目立つが、GDPは世界11位。韓国よりやや大きいぐらい。その大半はエネルギー資源の輸出に依存している。

アメリカやヨーロッパ諸国に匹敵する軍隊を持っている

 →総兵力、実勢は90-95万人。アメリカは250万人と兵士の数で差がある。90年代の不況により科学技術の立ち遅れが目立つ。古典的な戦争となると「強い」国ではない。

帝国主義で隙あらば領土拡大を狙っている

 →ロシアが主張しているのは旧ソ連領(ウクライナグルジア、その他東欧諸国など)がNATOに加盟し、西側についてしまうのが面白くないということ。旧ソ連領の国々に住む人は歴史的にもともと同じ国民だった。だからその辺境については親分であるロシアが面倒見るのが筋だろ。と言いたいらしい。それ以外の地域に関しては「他人の家のことには口出ししない」というスタンス。むしろ世界中の出来事に口出しするのはアメリカ。ただ、元来の帝国気質は未だに見られる。

ロシアにとっては地域の分断による主権を失うことこそが脅威だということ。

 

アイデンティティのないロシア

ソ連アイデンティティ社会主義共和国の同盟だった。

しかし、今のロシアには国家としてアイデンティティがない。民族的にいえば白人系ロシア人の他、アジア系のロシア人もいる。ただ、何を持ってロシアと言えるのかそこがない。すごく曖昧な国。

 

ロシアが軍事力に期待すること

・ロシアにとって軍事力とは政治的目的を達成する手段。(例:ウクライナNATO加盟防止による旧ソ連地域の「勢力圏」の防衛)

 

・軍事体制も大規模国家間戦争に備えたものではない

 

オリバー・ストーンオンプーチン」を読むとプーチンは特に経済を重要視してきたということがわかります。経済的にどん底だったロシアでエネルギー資源輸出に注力しGDP世界11位まで復活させたのはプーチンの功績。さらに以外にも経済的復活の過程で、軍備に費やすお金はGDP比率2.5%に抑えていた。軍隊にお金をつぎ込んで国が潰れるのを忌避していたらしいです。

つまり今日のロシアの特徴は昔ながらの大規模の戦争なんかすることはないということです。あくまで主権を守るために、古典的な軍事力はウクライナグルジアのような相手国の兵力の少ない小さな地域を占領する際に使用するが、NATOなどと正面切ってドンパチするつもりはないのです。

 

サイバー攻撃という言葉が聞こえて久しいように大国間の戦争は兵もはや士同士のぶつかり合いではなく、情報空間であったり、軍事インフラ及び民間インフラを攻撃して相手国の国内の分断や経済的なポテンシャルの低下を狙うという方向へシフトしているようです。ロシアはそのような非軍事的な戦争方法を「新しい戦争」と呼び、政治的目的の達成に利用しているということです。

 

 

まとめ

・古典的指標から見ればロシアは「弱い」

・ロシアの考える政治的目的達成のツールとしては、ロシアの軍事力は大きな「効用」を持つ

 

 

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