TOMYAM JOURNAL

世界の片隅でしたためる個人備忘録

コーヒーと日本人の文化誌: 世界最高のコーヒーが生まれる場所

コーヒーと日本人の文化誌: 世界最高のコーヒーが生まれる場所

 

文化人類学者、メリー・ホワイト氏による日本文化の解説書。

日本のコーヒーとカフェ文化の変遷を紹介していて、日本社会でのカフェとコーヒーの存在を俯瞰できる一冊。

 

まず、コーヒーという飲み物はカフェという空間と切っても切り離せないということが紹介されている。

コーヒーとは革新性のある飲み物であり、日本で最初に喫茶店ができたのは1880年代。西洋の文化を紹介する場所として登場した。以来、カフェ、喫茶店は新しい文化を体験する場所として受け入れられている。昨今、新たにできているカフェを見ていても、それらは「外国にあるものを日本にも」というような意図が現れている。文化の輸入だ。このように新しい文化を紹介する場所としての役割は今日も引き継がれていると言える。

また、日本はカフェ文化を取り込み、独自の文化にカスタマイズして発展させた。初めは外国文化を学ぼうと輸入されたカフェだが、日本人はカフェを外国風の珍しい空間を体験する場所というものから日常生活において機能的で魅力的な場所として訪れるようになり、やがてカフェは日本のものになった。

 

そこから日本にとってのカフェの役割は社会の変化とともにどのように変化して行ったのかを紹介している。

 

その中でも「なぜ緑茶は公共空間から遠ざかったのか」という日本の茶文化にも触れつつその対比が面白かった。

今日、緑茶は家のような私的空間で飲まれるものになっている。または、飲食店でサービスに含まれるものだ。6世紀には中国から伝わって来た茶は芸術的な商品として定着し、後に治療行為と結びつき、その後16世紀には一般の人々の生活に欠かせない飲み物となっていた。

茶を提供する茶屋は人々のコミュニケーションの場であり、それは今日のカフェの機能と同じだった。19世紀後半までにコーヒーとカフェ文化は広がり、それらは新しくて近代的な意味を持つものとして人気が出た。一方、茶は公共空間において茶道として芸術性を高め、一部の目の肥えた人々を楽しませる嗜好品となった。これが公共空間における茶文化の保守性を高め、代わりにコーヒーが民主的な飲み物として広まった。

ということらしい。

 

 

コーヒーと日本人の文化誌: 世界最高のコーヒーが生まれる場所

コーヒーと日本人の文化誌: 世界最高のコーヒーが生まれる場所

 

 

 

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