最近読んだ本と感想メモ 2019.5
「火花」 又吉直樹
現代のお笑い芸人の生き方をテーマにした小説。芸人というのは職業というようりも生き方であって、笑いとは何かをストイックに追求する姿はどこか退廃的だ。
「知の転覆」 橋本治
前書きに印象的な一節があった。
それはヤンキーとそうでないもの(本書では大学出と一応呼称している)の定義だ。
物事の判断基準は「自分の経験したことだけで、その判断基準を広げるということをしない。」これがヤンキー。
一方、これに対する大学出とは「経験値を用いずに、全て知識だけでジャッジする人」だそうだ。
題名の知の転覆とは、このヤンキーが増えていって深く考えることが疎まれている時代だよねということをスパッとわかりやすい文章で説明してくれるエッセイのようなものだった。
「物語 ドイツの歴史」阿部謹也
ザ・ドイツ史。宗教革命とナチスドイツ時代について知ろうと思って買った。ドイツは位置的にも国の大きさ的にもヨーロッパの中心。その歴史を還見れば民族間や、宗教観の争いの歴史だ。その国の歴史の中にある呪術的なものが現代のその国にどのように残っているのを観察する。ヨーロッパだけでなく世界中でナショナリズムが盛り上がり、ごちゃごちゃになっている。ここ十数年のグローバリズムからの揺り戻しなのだろうか。
この二冊は偶然にも「ナショナリズム」というキーワードで共通したテーマがあった。
身の回りのどんなのもに発酵が存在するあをナビゲートしてくれる本。発酵には長い歴史と伝統がある。そこには発酵技術の積み重ねもある。しかし、人類はまだ発行の全貌を把握していない。それゆえにまだ新たな発見の可能性があり、最先端の科学技術の研究対象でもある。
発酵とは菌の働きのことだ。菌は場所によって種類も働きも千差万別である。味噌は菌の発酵によって作られるが作る場所の違いによって風味がわかりやすく変わる。それらは菌の働きに任せるオーガニック的な菌との付き合い方だが、一方菌を飼いならし、その働きを人為的に設計しコントロールすることもある。
人類はこの二つの関係性の間で揺らぎながらも未知の世界を少しずつ掘り下げていく。
手前味噌作りワークショップの人気が示すように、ものを買って消費する楽しみから体験型の楽しみを求める人が増えていると聞く。その流れと昨今の発酵ブームは無関係ではなさそうだ。
情報過多の現代における「サムシング・ニュー主義」へのカウンターとして「サムシング・スペシャル」へ移行している。