TOMYAM JOURNAL

世界の片隅でしたためる個人備忘録

[書籍]行動分析学入門

行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由 (集英社新書)

杉山尚子 著

 

色々とある心理学の中の一体系。1930年代に米国の心理学者BFスキナーによって創始されたもので行動を「分析」する科学です。

 

人間や人間以外の動物には、それをさせる原因があり、その原因を解明し、行動に関する法則を見入出そうとする科学ということです。

 

面白いな思ったところは、巷でよく聞く心理学と一線を画し「心」を行動の原因の説明としないところです。

 

行動分析学では「遺伝的な説明」「過去の環境要因による説明」「現在の環境要因による説明」を受け入れるそうで、中でも現在の環境要因による説明を重視しているのだとか。

 

また専門用語で「行動随伴性」というものが出てきますが、これが行動分析学のキーになり、行動とその直後の状況の変化との関係性を分析するということだそうです。行動分析学ではこの行動随伴性によって現れる要因によって人の行動の頻度は変わってくかに焦点を当てています。

 

例ではコタツに入りながら食事をしてる男の子がいます。彼はいつも左手をコタツに入れたまま食事をしています。母親は行儀が悪いと男の子を叱ります。しかしお姉ちゃんは男の子が座っている場所はドアの近くで男の子は寒そうにしている様子に気づきます。そこで彼の左手付近にストーブを持ってきます。すると男の子がコタツに左手を入れる頻度が減り、ちゃんとテーブルの上に手を出してご飯を食べるようになります。そのあとストーブを離すとまたコタツに手を入れる頻度が増えるという現象が起こりました。

 

この男の子に起こっていることは左手付近が暖かくなれば「コタツの外に手を出す」という行動の頻度が上がるということ。環境要因によって行動が強化されたのです。

 

このように行動の直後に出現した要因によって人は特定の行動の頻度を増やしたり、また減らしたりするという法則があるということです。

 

つまり男の子がコタツに手を突っ込んだまま食事をしているのは別に彼の性格がだらしないからでは無いということになります。

 

本書に書いてあるように行動を随伴性によって見ることの利点は、行動の理由を個人の性格だとか心構えとかを原因にしないところですね。人の振る舞いは外的要因に影響されるいう視点があれば「お前はやる気がない」とか「才能がない」とかラベルを貼って済ましてしまうことを避けることができます。本書では行動分析学の視点ではこの個人を攻撃するようなラベリングを忌避している感じが強く伝わってきます。

 

この他にも細かい例が沢山書かれていて会社や学校、家庭でのあるあるを行動随伴性を軸に解説してくれています。普段の自分の行動や相手の行動を見返してみると納得することが多くて面白いと思います。

 

 

入門と謳っている割には専門用語が多くちょっとお堅い文章ですが何回も読み直して咀嚼すれば日常生活に新しい視点を加えることができるのではないでしょうか。

 

行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由 (集英社新書)

行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由 (集英社新書)