TOMYAM JOURNAL

世界の片隅でしたためる個人備忘録

[書籍]CREATIVE LOCAL エリアリノベーション 海外編

CREATIVE LOCAL:エリアリノベーション海外編

 

地方活性とは新しい価値観の発明

地域活性化という言葉を聞くようになってから久しい。静岡の田舎で生まれ育った私も、大都市以外で豊かに生きるににはどのような形があるのか常に興味がある。

日本でも都会の若者の間でIターンやUターンを希望する人たちが増えているということから、生活の豊かさに対する価値観が大きく変わり始めているのを感じる。

本書ではイタリア、ドイツ、イギリス、アメリカ、チリの衰退した地域がどのように再生を遂げたのか事例を紹介し、日本の地方活性化の将来へヒントを与えている。

 

例えばイタリアでは過疎が進んだ農村を農業を体感できる観光地化とする(アグリツーリズム)ことで、地方の何もない農村を美しい風景の広がる素朴だが豊かな土地と再評価した。そうすることで都会の生活では味わいない体験を求め都市や外国から観光客が増えた。観光客はその地域にお金を落とす。小さな村に雇用が生まれ、その地域で働く人も増えた。こうして小さな村に経済が循環していくという。

 

クオリティ・オブ・ライフ

 

活性化の評価指標は、交通量や居住者数、事業者数だったりする。国土交通省は、2050年には居住区域のうち6割以上の地域で人口が半分以下に減少すると試算している。人口が減るのであれば、それらを活性化の評価基準にするのはおかしい。街の幸せを計る新しい物差しが必要なのではないだろうか。

 

著者はこのように指摘している。こういったお役者が算出する幸福度などは確かに的を得ていない。極端な例だが意図してホームレスをやっている人は指標では豊かではないが、本人がそれでも楽しいと思えば豊かな生活を送っていると言えるはずだ。数値では現れない所に人が感じる豊かさがあるのだと思う。

そう考えている人は昨今少ないないはずだ。いまではクオリティ・オブ・ライフという言葉は巷でよく聞く。

地域活性化を語るにはQOLの価値観がベースになるのではないか。その地域で生きていくことが楽しいと感じることができるか、そして、その地域の一員であることに誇らしさを感じられるかどうかが大事になのだ。

 

コミュニティへの所属感

本書に紹介されている事例ではコミュニティ(共同体)の創生を地域再生のキーにしている街もある。

アメリカのデトロイトは2013年に財政破綻した。人口流出と郊外に広げすぎた住宅地の多くが空き家になるという問題を抱えたこの街では再生戦略として都市を縮小させることを迫られた。その基本軸になるものの一つがネイバーフッド(地区コミュニティ)だ。

あるNPOは住宅地の荒廃などの問題を抱える地区内の掃除や、美観の回復、アートや文化への参加機会の提供などを通して、住民の日常生活の改善を図り、地区への愛着を強化することを狙った活動している。

ダウンタウンではサッカーリーグを作り、デトロイト内の30ものチームが競いあう。リーグ戦を通して結束感と連帯感を育むのが狙いだ。シーズン中は地区内のバーを中心に賑わいを見せているらしい。こちらも自分の所属する地域のチームを応援することで地域への愛着が深まるような工夫がされている。

 

 

本書で紹介せれている事例は、日本の地方でも楽しく暮らしていくということを考えていく上で参考になるだろう。

いずれの街もキーとなるのは豊かさの価値観を再定義することだった。経済発展や物の消費、所有などに重きをおく価値観ではなく人とのつながりや、土地への愛着、生活に情緒を感じるかどうかがポイントだ。

そしてそれらが持続可能なものにするためには経済的な裏付けが必要ということも示唆している。

 

CREATIVE LOCAL:エリアリノベーション海外編

CREATIVE LOCAL:エリアリノベーション海外編

  • 作者: 馬場正尊,中江研,加藤優一,中橋恵,菊地マリエ,大谷悠,ミンクス典子,阿部大輔,漆原弘,山道拓人
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2017/12/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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