TOMYAM JOURNAL

世界の片隅でしたためる個人備忘録

[書籍]モチベーション3.0

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (講談社+α文庫)

ダニエル・ピンク 著

 

「子供には手伝いをした代わりにお小遣いをあげてはいけない」

 

成果に対する報酬や罰則、つまりアメトムチによって相手をコントロールすることは長い歴史で行われてきたことだ。人類の歴史を振り返ってみると今日まで、例えば子育てや仕事というものはほとんどこのアメとムチによってコントロールされてきたのではないか。

 

しかし、こうした動機付けは否定的な影響を与えるようだ。

 

本書ではモチベーション=動機付けについて考察し、

新しいモチベーションを個人や組織、仕事、生活、教育の中でどのように応用するかを示している。

 

人間がモチベーションを発揮する原理をコンピュータのOSの様に例えると、

これまでに3つのバージョンがあると言う。

 

まずは<モチベーション1.0>。人間は生物的な存在なので生存するために行動する。生きるために食べる。寝る。交配するなどの原始的な動機だ。

 

そこから<モチベーション2.0>にアップデートされる。

これは人には報酬と処罰が効果的だとみなし、いわゆるアメとムチによる動機付けだ。この方法で動機付けする場合、仕事では人は従順な態度求められる。言われたらやる頼まれたらやると言う感じだ。本書ではこの様な外的な報酬による動機付けで動く人をタイプXと呼ぶ。

 

冒頭のアメとムチはモチベーション2.0に当たるわけだがなぜ否定的な影響を当て得るのか、それは成功報酬に依存する様になり、短絡的な思考を助長しすろことで長期的な視野で考えることを阻む。また外的な要因により行動の目標を設定されるとその外的な数値だけを目標にしそこへ到達するためなら倫理にもとる道であっても最短ルートを選ぶものが現れるからだ。

 

例えば、短期的に得られる金銭報酬を約束した場合はコカインやニコチンを摂取した時の脳の反応と似ている。そして短期的に得られる快楽を何度も欲するようになる。同じように与えられれば行動するが、もし前回の報酬よりも下回ったりした場合は動機づけれず結局成果が下がてしまうのだ。

子供に家事を手伝った報酬としてお小遣いを与えることが子供のためにならないのは、家事を手伝うのは道徳的な責任や家族間の義務と言う考え方を奪ってしまい、家事が商業的な取引になってしまうからだ。それにより「行動の基準」と「報酬」の違いを学ぶ機会を失ってしまうのだ。

 

ただこの交換条件付き報酬は対象の作業がルーティンワークかそうでないかで効果が変わるので一概に排除すべき動機付けとは言えない。必要だがどうやっも退屈な仕事というのはある。そういう作業をしてもらう場合は交換条件付き報酬が効果的だ。

 

そして本書ので説くのが<モチベーション3.0>である。

人間には、学びたい、想像したい、世界を良くしたいという第三の動機付けだ。これは内発的に起こるものであり物事に積極的関与が見られる。

 

人間にはそもそも「課題に取り組むこと自体が、内発的報酬に当たる」という性質があるそうだ。

この様な人を本書ではタイプIと呼んでいて、内発的な欲求をエネルギー源として活動する人たちだ。活動することそのものから生じる満足感に結びついているので外的な報酬によって動機付けれらることが少ないのだ。

 

タイプIの人たちは自主性ややりがい、目的などが動機付けになっているのでクリエイティブや非ルーティンな仕事をする人たちが多い。

長時間働いていても本人たちは仕事そのものが楽しいのでストレスを感じない。

 

内発的な欲求により自律的に行動することで仕事のパフォーマンス向上、プライベートの充実、健康の増進など全般的な幸福度の上昇につながるのだ。

 

そして本書で一番の核心はこのタイプIはもともと備わっている性格ではなくて誰でも後天的に作ることができるということだ。タイプIツールキットというものが個人用、組織用、保護者や教育用とそれぞれ自律性、マスタリー(熟達)、目的の内発的動機付けの三つの要素を仕事や生活に取り入れるための演習方法が紹介されている。

 

思うに子供はみんなタイプIなのではないか。大人になっていく過程でなぜかタイプX型の生き方をインストールさせられてしまっている。それは労働をして生きていくという社会においては必要なことだったのかもしれないが、生きる上での充実感を抑えてしまっている。

 

一度染み付いてしまったタイプX型の思考をなくすのは難しいかもしれないがもっと人生を充実したものにしたいと思っているのなら本書の示している方法は手助けになるかもしれない。

 

最後に本書に出てくる心理学者、ミハイ・チクセントミハイの言葉より

「自分よりも大きな。永続する何かに属している感覚を持たなければ、私たちは真に充実した人生を送れない」

 

 

 

 

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