TOMYAM JOURNAL

世界の片隅でしたためる個人備忘録

[書籍]暗幕のゲルニカ

暗幕のゲルニカ

原田マハ 著

 

 ピカソの代表作、ゲルニカを軸に20世紀当時のピカソと21世紀の近代に生きる主人公が「戦争」というものにアートの力で立ち向かう話。

 

主人公はようこという日本人女性だ。ピカソもようこも戦争という暴力行為の連鎖を止めるのは武力ではなくアートの力だということを信じている。この小説を読み進めながら私は何度もインターネットでゲルニカの絵やそのほかのピカソの絵を検索した。

 

 

以前、旅行でスペインに行ったがその前に本作を読んでスペインの歴史やゲルニカが書かれた敬意を知識があればまた楽しみ方が変わっていただろう。この小説は物語としては驚くものはないがアートやその周りの世界へのガイドとして十分読み応えがあった。

 

原田マハの小説はこれ以外に楽園のカンヴァスを読んだがそれもまさに同じで、アートに疎い私でもアートが作られた背景に興味を持つようになった。芸術家がその作品に対してどう向き合ったか、何を考え、思い表現したのか。その時の時代はどうだったのか。そう行った視点を持って対象物を鑑賞することの面白さを教えてくれる。

 

本書の軸であるゲルニカに至っては、ピカソの人間の愚行に対する怒りのメッセージは9.11テロ後の現代でもそのメッセージを強く発信している。

 

そういう視点を私はこの本を読んで学んだあと、この本の装丁から内表紙の作りをじっくり見てみた。

表紙はタイトルそのものであるピカソのゲルニカ。

本書を読んでいる最中に何度も表紙にその絵がどうなっているかを確認しに行った。また、内表紙は燕尾色は私の推測だが戦争で流れる血ではないだろうか。そんな考えを巡らせながら最後まで読んでしまった。

 

最近はほとんどKindleで本を読むことが多くなったが、久しぶりに紙媒体ならではの豊穣な読書体験を味わった。

 

 

暗幕のゲルニカ

暗幕のゲルニカ