TOMYAM JOURNAL

世界の片隅でしたためる個人備忘録

[書籍]JJ 横浜ダイアリーズ

JJ 横浜ダイアリーズ

ロバート・ハリス 著

 

ロバート・ハリスの初長編小説。ハリスさんの青春時代の体験をベースにしたJJと言う名の男の子が主人公のフィクション。ロバート・ハリスファンで彼の本を何冊か読んでいるなら聞き覚えのある話だ。

 

1964年の横浜という、今よりも猥雑で癖のある街の雰囲気が伝わってくる。これは筆者がその時、その場所で生きていたからこそ描けるものだろう。

 

本作は、主人公JJと年上の女子大生、優子との初恋との奇特でセクシャルな体験の物語を軸に、横浜でのインターナショナルスクールでの上級生との喧嘩や、教師の性的なハラスメント、元町や伊勢崎町界隈で暮らす人たちの話、そして父親や、JJが英語を教えている老人、カブさんが語る戦争時代の話が物語に厚みを加えている。読んでいるうちに当時の横浜の世界に入り込んだようになる良い読書体験だ。

 

ただ主軸のJJのセクシャルな恋物語よりも父親やカブさんの話の方に引き込まれてしまった。彼らは戦争という不条理を経験し、その最中、愛するものを失っている。その話に比べるとJJ恋物語は否応無く小さく見えてしまう。

 

僕はハリスさんの本を何冊か読んだことがあるから、これは”ロバート・ハリス”の物語として読めるが、ロバート・ハリスを全く知らない人にとって主人公がクォーターでカッコよくて、英語が話せて喧嘩が強くて、女にモテる男の恋愛に感情移入するなんて難しいのではないかな。どうなんだろう。

でも、そんな男が年上の女性にめちゃくちゃにされるセクシャルなパートがこの小説の面白い所だろう。

 

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