TOMYAM JOURNAL

世界の片隅でしたためる個人備忘録

2018年夏に観た映画

「ミッション・インポッシブル フォールアウト」 監督 クリストファー・マッカリー

前作「ローグネイション」のおうな王道エンターテイメントではなく、シリアスさや、アート性が増していた。監督が変わったからかと思ったが、なんと前作同様クリストファー・マッカリー監督だった。確かにジャック・リーチャーシリーズを思わせる毛色だ。

アクション映画がダークでシリアスになっていくのは「007」を始め、久しいが「MI」だけは変わらず明るく楽しいスパイ映画を提供してくれるものだと期待していた分肩透かしを食らった感がある。

だからと言って今作の出来が悪いと言いたい気持ちは一ミリもなく、かなり楽しめた。

今回はアーティスティックなカットが多い印象だったがその背景となっているパリであり、改めていい街だなぁと思った。

 

「フロリダプロジェクト」監督 ショーン・ベイカー

アメリカ社会の底辺で暮らすシングルマザーヘイリーとその娘ムーニーと友達たちの話。定職に就くことが難しく、それ故にアパートなどに居住できない人たち。彼らはモーテルなどの安宿でその日暮らしを続けている。

こう書くと気が重くなるような映画なのかと思うが、眩しいくらい色鮮やかで微笑ましい映画だった。

というのもこの映画は7歳の子供たちの視点で進んでいくからだ。まだ幼い子供だちは自分たちが社会の底辺の厳しい環境に置かれていることを自覚していない。目の前には冒険に満ち溢れている。モーテルの隣人の大人をからかったり、アイスクリームを買うために他人にねだったり、全てが楽しい遊びに変わる。観客はそんな子供たちの観ている世界を体験することになる。それは邦題に付いているような魔法にかかったようなひと時だ。また母親ヘイリーも良い。仕事がなく、マリファナを吸ったりもするが娘ムーニーにはどこまでも優しい。ムーニーが毎日楽しく明るくいられるのは母親の無条件の愛があるからだろう。

ただ夢物語は続かない。現実の影が親子に無情にも忍び寄る。金欠に窮するヘイリーはやむなくセクシャルサービスの仕事で急場をしのぐが、通報され福祉局によりムーニーが児童保護の対象になってしまう。物語のクライマックスでヘイリーが叫ぶ「FUCK」は弱い立場に陥ったものへ理解が届かない社会へのシンプルなメッセージだ。この世はFUCKなのだ。

しかし、映画は最後まで魔法を終わらせない。福祉局の職員がヘイリーからムーニーを引き離そうとする当日、周りの大人たちは何もできない中、救いは子供ゆえの行動だった。疾走する子供達が向かう先には夢の国の中の城がある。

最後の高揚はディズニーが決して作れないディズニー映画だった。