TOMYAM JOURNAL

世界の片隅でしたためる個人備忘録

台北旅行 2018 その2

9月29日 3日目

午前、台北の現代芸術館へ。今回は映像作品の展示だった。映像作品は鑑賞時間を自分でコントロールできないからあまり好きではない。どれも結構な長さがあったので、全部見ようとしたらかなりの時間が必要だろう。 適当に流しみして時間を潰す。

 

正午、台湾人の友人ジュンくんと落合い、台北を案内してもらう。一年ぶりの再開だがジュンくんは一年間ワーキングホリデーで日本の各地で暮らしていたこともあり日本語が格段に上達していた。

案内してもらったのは台湾大学の周辺。近くに他の大学もあり、この辺はアカデミックで、文化的な雰囲気がする。まずは昼食。台湾式ハンバーガーとタピオカミルクティーを買い食べながら台湾大学を散策する。

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台湾大学の校舎のいくつかは日本統治時代に建てられたものを利用しているという。台湾にはバロック式の建物が多く見られるがそれらはだいたい日本が統治時代に建てたものだ。現在ではそれらのいくつかは文化的な施設として再利用されている。

 

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俺のリクエスト、水餃子。台湾の餃子は水餃子が主流。焼き餃子も日本よりも美味しい。ジュンくんもその点は合意。

ここは「八方雲集」というチェーン店。しかし美味い。餃子一個5ドルから注文できる。

 

公館駅周辺を散策。ジュンくんお気に入りの本屋さんを案内してもらう。この周辺は独立した個人書店が多いらしい。中国語なのでどんな本が置いてあるのかわからないが間違いなく知的好奇心を求めてくる人が集まる良い本屋だということがわかる。ちなみに台湾では電子書籍よりも断然紙の本が好まれるようだ。大型書店では24時間営業のところもあるらしい。本好きには堪らない街だ。

 

その後、「海辺のカフカ」というカフェで休憩。店名はもちろん村上春樹の同名小説から取っている。台湾の人気インディーズバンドのボーカルがオーナーで、本と音楽をコンセプトにしているらしい。海辺のカフカがどんな小説だったか全く思い出せないが、このカフェは渋くてカッコいい。こういうカフェが地域にあるのが羨ましい。音楽や本が好きな人たちが集まりゆっくりと過ごすたまり場なんだろうな。この辺りの雰囲気は東京で言うところの高円寺や、下北沢らしい。

 

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地下は同系列のライブハウス&バーになっている。またの機会に訪れたい。

 

公館駅から歩いて15分くらいにある芸術村へ。丘の斜面にある集落へアーティストたちが移り住んで独特の文化が生まれていると言うことで、政府が特別地域として認定したらしい。日本で言うと尾道のような感じがした。

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駐車場横のストリートグラフィティのある壁でテニスやら、キャッチボールやらをしてる。

 

 

最後に台北駅までだらだらと歩き、軽く夕食を食べて〆る。名前を忘れたが初めて食べた。酸味が効いていて美味しい。

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楽しかった。ジュンくんありがとう。これで満足して帰れる。

 

と思っていた矢先、ジェットスターからメールが来る。台風のため翌日の関空行きの便の欠航のお知らせ。

 

急いで宿に戻り、振替の手続きをするも最短で二日後の便になるらしい。

 

まさかの台北滞在延長が決まる。

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やれやれだぜ。

 

その3へ続く。

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台北旅行 2018 その1

久しぶりの海外。ブログ名がなんか海外トラベルっぽいのに全くそういった記事がないことに気づく。どちらにしろ大した旅行記事をかく気がないので、備忘録として残しておくことを目的とする。

今回は友人を尋ねることを主な目的として3泊4日台北に滞在した。結果としては台風の影響で帰れず、5泊になってしまった。皮肉にも当初の予定していた日程はずっと雨が降り、延長した2日間が晴れだった。

 

9月28日台北初日

関西空港から桃園空港へ。関西空港LCCは驚くほど充実している。連休を外せば台湾なら往復で16000円くらいでいけるし、驚いたのはエアアジアならハワイ直行便が往復で35000円というのがあった。これは台湾への旅行を計画中に発見したのだが危うくポチるところだった。もしそうしていても決して後悔しなかっただろう。

と、考えている間に到着。

MRT(地下鉄)で台北駅までいく。台北はMRTが充実していてとても便利だ。桃園空港から台北駅まで1時間もかからないし料金も160ドル(600円ぐらい)と安い。市内でも初乗りが20ドルと日本に比べればかなり安い。悠遊カードというICカードがあり、日本で言えばSuikaと使い勝手が同じだ。このカードを使うとMRTの乗車賃は2割引になるというからさらにMRTが使いやすくなる。コンビニや空港内にあるお店での支払いも悠遊カードで済ますことができる。

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友人の進めで台北駅近くのホステルに泊まる。

台北駅は三つのMRTが交わる駅なのでとても便利だし、周辺はホステルが充実している。

初日は、金峰魯肉飯で夕食をとる。魯肉飯とメンマを注文し台湾をインストールする。地元の人にとても人気があるようで、食事時は少し並んでいた。みんな、食べてはさっと店を後にする。こういったお店では長居は無粋らしい。郷に入っては郷に従えだ。

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その後、中山という地区を歩き流す。この辺りは東京で言うところの銀座だろうか。キラキラしていて賑やかだが、日本で見たことあるブランドの看板ばかりが目に入るので面白みに欠けた。

 

9月29日 2日目

午前に「小慢」と言う茶藝館を尋ねる。台湾のお茶文化は日本と違うので興味があった。ここはホステルに置いてあった日本語のガイドブックで見つけた。それ故にお店の人もお客さんも日本人が多かった。私は中国語が全く話せないので、日本語が通じるのは助かる。

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お店は静かな雰囲気でゆっくりとお茶を楽しめる空間だった。

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茶葉一回で5煎まで飲むことができる。小さい湯呑みでチビチビと飲む。

 

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外は雨だが窓越しに眺めながら潤んだ空気の中でお茶を楽しむのが台湾じゃないか。

 

その後、一旦宿で仮眠をとり夕方からボルダリングにいく。T-UPと言うボルダリングジムへ。

最近は、海外に行くときは時間を作って地元のクライミングジムへ行くようにしている。典型的な観光ルートは面白みがないと言うときは、自分の趣味の場所へ行くのが得策。ローカルたちと一緒にセッションすれば楽しい時間を過ごすことができる。

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このジムのグレードが辛めと言うことと自分が練習不足ということもあり、V3までしか手が出せなかった。もっと高グレードを登れるようにならなければ一緒にセッションをしようなんて声を掛けれない。悔しい。けどとても楽しかった。旅行中の運動不足を解消できる。

 

夜10時ぐらいに宿に戻る。夕食はコンビニで買ったお弁当で済ます。

 

その2へ続く。

 

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2018年夏に観た映画

「ミッション・インポッシブル フォールアウト」 監督 クリストファー・マッカリー

前作「ローグネイション」のおうな王道エンターテイメントではなく、シリアスさや、アート性が増していた。監督が変わったからかと思ったが、なんと前作同様クリストファー・マッカリー監督だった。確かにジャック・リーチャーシリーズを思わせる毛色だ。

アクション映画がダークでシリアスになっていくのは「007」を始め、久しいが「MI」だけは変わらず明るく楽しいスパイ映画を提供してくれるものだと期待していた分肩透かしを食らった感がある。

だからと言って今作の出来が悪いと言いたい気持ちは一ミリもなく、かなり楽しめた。

今回はアーティスティックなカットが多い印象だったがその背景となっているパリであり、改めていい街だなぁと思った。

 

「フロリダプロジェクト」監督 ショーン・ベイカー

アメリカ社会の底辺で暮らすシングルマザーヘイリーとその娘ムーニーと友達たちの話。定職に就くことが難しく、それ故にアパートなどに居住できない人たち。彼らはモーテルなどの安宿でその日暮らしを続けている。

こう書くと気が重くなるような映画なのかと思うが、眩しいくらい色鮮やかで微笑ましい映画だった。

というのもこの映画は7歳の子供たちの視点で進んでいくからだ。まだ幼い子供だちは自分たちが社会の底辺の厳しい環境に置かれていることを自覚していない。目の前には冒険に満ち溢れている。モーテルの隣人の大人をからかったり、アイスクリームを買うために他人にねだったり、全てが楽しい遊びに変わる。観客はそんな子供たちの観ている世界を体験することになる。それは邦題に付いているような魔法にかかったようなひと時だ。また母親ヘイリーも良い。仕事がなく、マリファナを吸ったりもするが娘ムーニーにはどこまでも優しい。ムーニーが毎日楽しく明るくいられるのは母親の無条件の愛があるからだろう。

ただ夢物語は続かない。現実の影が親子に無情にも忍び寄る。金欠に窮するヘイリーはやむなくセクシャルサービスの仕事で急場をしのぐが、通報され福祉局によりムーニーが児童保護の対象になってしまう。物語のクライマックスでヘイリーが叫ぶ「FUCK」は弱い立場に陥ったものへ理解が届かない社会へのシンプルなメッセージだ。この世はFUCKなのだ。

しかし、映画は最後まで魔法を終わらせない。福祉局の職員がヘイリーからムーニーを引き離そうとする当日、周りの大人たちは何もできない中、救いは子供ゆえの行動だった。疾走する子供達が向かう先には夢の国の中の城がある。

最後の高揚はディズニーが決して作れないディズニー映画だった。

[書籍]モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語

内田洋子 著

内田洋子という名前は以前から知っていた。本屋で著作を見るたびそのタイトルからイタリア在住で、イタリアをテーマに書いているんだろうなと予想していた。

未だイタリアを訪れたことのない私には、いつか行ってみたい憧れの国だ。今回初めて著作を読むことになり、一体どんなイタリアを文章で楽しませてくれるのだろうと胸が膨らんだ。

 

本書は、著者がヴェネチアにある書店の店主にその書店の歴史を訪ねるところから始まる。

その書店は代々、ほんの卸業を営んできた。ただ、彼らは初めからヴェネチアに書店を構えていたわけではない。元々は旅をして本を露店で売り歩いていたという。その出自はモンテレッジォというヴェネチアから300km以上離れた山奥の小さな村であった。

その昔、村から何十人もの村人が、イタリア各地へと本を売り歩いていたという。

現在では、廃村寸前といってもいい山奥の小さな村の人々が何故、本を売り歩くようになったのか。

著者はその歴史を調べ、モンテレッジォを訪ね、本を売る村人たちの織りなす人生と人々の本に対する愛情を追っていく。

モンテレッジォは農作に適した場所ではない。それ故に特産品もなく、村人たちは必然的に売れる物を売らなければならなかった。その中で落ち着いたのが本だった。

村人たちは、出版社から余っている在庫を預かり受け、方々を周り、その本を読みたい人を見つけ、売る。訪れた先々では、人々がどんなことに興味があり、どんな本を欲しているかに耳を傾け、それを出版社に伝える。そしてまた、本を仕入れ、必要な人に届ける。そうして、卸売としてのスキルと信頼を代々積み重ね、イタリア中に散らばっていった。先出したヴェネチアの書店にもその血筋が流れているのだ。

彼らは今日でも、イタリア中の小さな書店で人々の知識への欲求に答え続けている。

本書の内容はイタリア文化の中でもなかなかニッチな物だが、豊穣な文化の土壌の一端を垣間見ることができた。

 

ちなみに、今まで内田洋子の著作を読まなかった理由には、Kindle版で配信している著作が見つからなかったからだ。

しかし、本書を”手に取って”、その理由がわかった気がする。本書の装丁や挿しに使われている写真の色合いなど、本そのものの作りにこだわっているのがわかる。著者もこよなく本を愛する人の一人であり、読者には、実際に本を手に取った時の表紙の肌触りや本の厚み、そういった所にも愛着を感じて欲しいのだろう。

 

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語

 

 

 

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[書籍]青春を山に賭けて 

青春を山に賭けて (1977年) (文春文庫)

植村直己 著

 

冒険家植村直己の名前を聞いたことだけはあった。私自身クライミングをするようになってから、アウトドア方面のことにも多少目が向くようになっていた。

しかし、私は未だに凍傷で手足の指を失うことや、遭難して死んでしまうことも珍しくないアルプス登攀や冒険になぜ人は惹かれるのだろうと思う。先日、登山家の栗城氏がエベレストに挑戦中に命を落とした。何年か前には凍傷で手足の指のほとんどを失ったというニュースも見たことがある。困難に立ち向かい乗り越える姿は人々に勇気を与えるのはわかるが、それは指を失ってまでしてやることなのだろうか。指を失っても諦めないということがそんなに大切なメッセージなのだろうか。見る側がどう受け取るかはそれぞれの判断だが、登山家や冒険家本人からしたら、彼らが登山や冒険を続けるのは自己満足でしか無いのだろう。誰のためでもなく自分のためだけに続けているのだ。その資金集めで企業にスポンサーについてもらう場合、企業からすればスポンサーする相手を通して自社のメッセージを発信する広告塔になってもらわなければならない。そうすると登山家や冒険家は自らのチャレンジに共感してもらわなければならないわけだが、そこで指を失ってでもチャレンジし続けようというのは狂気の沙汰でしかないのではないか。

その点、植村氏は冒険や登山とは誰のためでもない、自分の為だけのものだと記述している。それとスポンサーが付くつかないは別の話だし、時代も違うだろう。本書では、植村氏は冒険の費用を自分で稼いでいる。肉体労働をし、生活費を切り詰め、次の冒険の計画を立てている。もちろん冒険先でもお財布の中身はシビアだ。しかし、だからこそ自由なチャレンジができたのだろう。

 

本書の中で特に好きな話は、大学卒業後アルプスを登るために少ない現金を持って海外へ出て行くところだ。植村はまず、アメリカに渡り資金作りを計画する。計画といってもアメリカはヨーロッパよりも生活水準が高いからそこで金を稼ぎ、生活水準の差分を活動資金に当てようという大雑把なもので、実際にはアメリカに渡ってから仕事を探すという行き当たりばったりの計画だった。もちろん就労ビザなど持っていないから、違法労働である。

結局、移民局に捕まり強制送還の一歩手前まで陥るが、奇跡的な出会いと機転で運よく乗り切るのだ。このようなギリギリの状況で機転を利かせて乗り切るということがこの後何度もある。結果として運任せのギャンブルのように思えるが、運というのは差し迫った状況で一歩踏み出せるものに味方するものではないだろうか。

その後、植村は強制送還とまでは行かずともアメリカから追い出される形でフランスへ行く。そこでも生活費を確保するために仕事を探すのだがこれまた、運よくスキー場のパトロール係の職を得るのである。フランス語もスキーもできないのにである。これは絶対にアルプスに登る、出なければ全てを置いて日本をでた意味がないという大きな目標と熱意が植村に味方したのだろう。植村と一緒に仕事を探しにきたフランス語を流暢に話せるイギリス人がいたが、彼は仕事にあぶれてしまった。その理由を植村は、「自分は言葉が話せない分行動で示すしかなかったが、彼はフランス人とコミュケーションが取れる分、それがただおしゃべりをしているだけと評価されたのではないか。」と考察している。植村はスキーができないのにできると言って職を得た。本格的に冬が到来し、スキーを履いて雪上で仕事をする際、最初の一滑りで無残にも転んでしまい、スキーができないことがバレてしまう場面がある。この時マネージャー含めそこにいたフランス人の同僚たちが一同爆笑し、「大丈夫、スキーは1ヶ月もすれば滑れるようになる。君はここで仕事を続けてもいいんだよ。」とマネージャーは植村のスキー技術を見抜いた上で雇い入れていたというエピソードも好きだ。さらにこのマネージャーは植村に就労ビザのスポンサーになり滞在を許可するという好待遇をオファーする。これによって植村はその後、3年フランスを拠点にアフリカやネパールなどの山々を登攀することになる。

本書の中でこう言った植村氏の愚直な行動の結果として周りのサポートを得て、目標に近づいて行く過程が読み手にも勇気を与えてくれる。

 

私も昔、オーストラリアで生活していた経験があるが、この植村氏の行動力と比べると恥ずかしいくらい腑抜けであった。オーストラリアは英語圏であるが英語が満足に喋れないといことに気が引けて仕事を探す際、中々自分を売り込むことができなかった。その都度、もっと英語ができればと考えていたが、愚直に飛び込む行動力がなかったこと、そして植村氏のように金銭的に切迫した状況ではなかったことが慢心を産んだのではないだろうかと今は思う。

 

青春を山に賭けて (1977年) (文春文庫)

青春を山に賭けて (1977年) (文春文庫)

 

 

 

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[書籍]マリア・シャラポワ自伝

マリア・シャラポワ自伝

ロシアの女子テニス選手、マリア・シャラポワの自伝。4大会全てを含むグランドスラムで5勝の記録を持つテニス界の人気選手。様々な広告のモデルにも起用されているのでテニスに興味がない人でも名前を聞けば顔が浮かぶだろう。

そんな超有名選手がまだキャリアの成熟期である2016年に禁止薬物指定違反で約15ヶ月の資格停止を受ける。

現在は停止期間が終了し、ランキングを大きく落としながらもツアーに復帰している。

その活動停止をしている期間を利用して書いたのが本書だろう。内容はシャラポワの今までの人生のほぼ全てを語っている。

タイトル名は「UNSTOPPABLE」。幼少期にテニスをはじめその才能を見出され、娘の才能に掛けた父親と二人きりで、アメリカのテニススクールに入るために渡米する。当時シャラポワは6歳、父親の所持金はわずか700ドルだった。その後11歳でナイキと契約し、14歳でプロデビュー、そして17歳でウィンブルドン優勝と華々しい結果と美貌で有名になるが、シャラポワにとっては幼少期からテニスをすることが生きる手段であり、貧しさから抜け出すには勝つしかなかった。今ではセレブスポーツ選手のように知られているがその根幹にあるのは常に戦い続ける人生だったのだ。

 

本書で面白かったのは全てが詳細に書かれていることで、所持金700ドルでアメリカの地に降り立った親子が実際にどのように行動したのか。正直そこが知りたかった。シャラポワの父、ユーリはフロリダにあるまっすぐにアカデミーに趣き、コーチたちの前で娘にテニスを披露させる。そしてシャラポワのポテンシャルに驚くコーチやアカデミーのオーナーにスカラシップとして滞在させてくれと売り込むのだ。それが実現するくらいシャラポワの才能は際立ったものだったということだ。

シャラポワのテニス人生には父ユーリ氏の存在が極めて大きかった。研究熱心であった父親は娘のキャリアの成功のために何ができるかを調べ、ウィリアムズ姉妹をモデルとした。成功する選手には必ず幼い頃に誰かみじかな人物が導いてくれている。ウィリアムズ姉妹にもアンドレ・アガシにもそういうの親がいた。自分にとって父親がそういう存在だったとシャラポワ本人も語っている。

そしてそんな父親は少なからず周りの人たちとトラブルを起こした。そのせいで一旦入ったアカデミーを追い出される羽目になる。その後他の親子は他のアカデミーに同じようにスカラシップとして入れるように交渉しに行くが、そこに待ち受けていたのは貧しい親子の足元を見た悪質な経営者の登場だったりと波乱万丈な人生が続いて行く。世の中は厳しいものだ。その後シャラポワが11歳の頃ナイキと契約し、まとまったお金が入り、生活の心配がなくなったという場面では少しほろっとした。

とここまででまだ本書の半分以下、その後プロとしてデビューして、グランドスラムで勝って、恋人ができて、、、などなど幼少期のシンデレラストーリーほどの刺激はなかったが全てにおいて赤裸々に語っている。それらは毒々しいものでもある。

 

[書籍]TRANSIT ポルトガル

TRANSIT(トランジット)40号ポルトガル この世界の西の果てで (講談社 Mook(J))

 

ユーラシア大陸の最西端、スペインの脇に隠れるように位置するこの国は、今日では経済的には目立たないが一度栄華を極めた後の成熟した文化を醸し出している。と、高倉健さんのエッセイで読んだことがある。また健さんはエッセイの中で、経済を最優先してそれを実現させた日本の社会はこの後ポルトガルのように文化的な成熟をしていくことが大事なんじゃないかというようなことを書いていた。その一文が長く頭の中にあり、ポルトガルという国へいつか一度訪れてみたいと思っていた。

そんな折に本屋で見つけたTRANSITの最新号がたまたまポルトガル特集でした。

TRANSITは毎号、国や地域を特集していて、それらの歴史や文化を知るための入門書として楽しめます。

 

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TRANSITといえば素敵な写真。ポルトガルの風景写真。

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ポルトガルに所縁のある文化人たちの紹介。

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外国文化で気になるものの一つは何と言っても食文化。ポルトガルはEU内の一人当たりの魚介類の消費量がトップであるほど魚料理が豊富なことに加え、肉、米、小麦と料理のレパートリーが豊富です。Netflixのフードドキュメンタリー「腹ペコフィルのグルメ旅」でもリスボンの回があり、食文化の成熟さが際立っていました。

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もちろん日本との歴史も紹介しています。銃に天ぷらにキリスト教。これらを日本に持ち込んだのは大航海時代のポルトガルでしたね。忘れていた日本の歴史もこれでサクッと復習できます。

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中綴じでポルトガルのトラベルガイドまで付いていました。これは重宝しそう。

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とまあ、いつものTRANSIT同様読み応えのある一冊。

個人的には檀一雄や高倉健さんについて少しでも触れて欲しかったけど無かったのでそこが残念でした。

さて次は実際に行く計画を練らねば。

 

 

TRANSIT(トランジット)40号ポルトガル この世界の西の果てで (講談社 Mook(J))

TRANSIT(トランジット)40号ポルトガル この世界の西の果てで (講談社 Mook(J))

 

 

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